『呪われた本』

これは、私が大学時代に実際に体験した出来事だ。

古書店巡りが趣味だった私は、ある日、大学近くの小さな古書店に立ち寄った。

そこは店主がひとりで営む、昔ながらの書店だった。

店の奥の棚に、一冊だけ埃をかぶった黒い本が置かれていた。

表紙にはタイトルも著者名もなく、唯一、擦れたような見慣れない記号が刻まれている。

不思議な魅力を感じ、何気なく手に取ってみた。

「いくらですか?」と店主に尋ねると、彼は沈黙した後、低い声で言った。

「……それ、持っていっていいよ。」

なぜか、彼は本に触れようとしなかった。

そして私は家に帰り、本を開いた。

中の文字は古い日本語で書かれており、意味はよくわからなかったが、「供物」「儀式」「封印」といった言葉が目に入った。私は特に気にせず「変な本だな」と、その本を机の上に置いたまま眠りについた。

しかし、その日の夜のことだった。

眠っていた私は、ある違和感で目を覚ました。

——ページをめくる音がする。

時計を見ると深夜2時。部屋は締まりきっており、風もないはずなのに、紙を擦るような音が、すぐそばから聞こえる。

恐る恐るその音の方を振り向くと、本が勝手にめくれていた。

その翌日から、不可解な現象が続いた。

夜になると、相変わらず机の上の本のページがめくれる音が聞こえたり、朝起きると、本が違う場所に移動していたりする。

そしてある日、決定的な異変が起こった。

授業から帰ると、本が床に落ち、開かれたページに赤い文字が書かれていた。

「最後まで読め」

血の気が引いた。

さらに本を開くと、今まで読んだはずのページが白紙になっており、代わりに新しい文章が現れていた。

そこには、私の行動が詳細に記されていた。

「男は古書店で本を手に取り、家に持ち帰った。そして今、そのページを開いている。」

驚き、私はすぐに本を閉じた。

恐怖を感じた私は、本を処分しようと決意した。

しかし、ゴミ袋に入れようとした瞬間、指先に鋭い痛みが走った。

驚いて本を開くと、新たな文章が刻まれていた。

「捨てるな」

私は恐ろしくなり、近くの神社に本を持ち込んだ。神主に事情を話すと、彼は本を手に取り、しばらく沈黙した後、静かに言った。

「……これは“持ち主”がいるものです。あなたが手に取った時点で、関係ができてしまったのかもしれません。」

私はそのまま本を神主に預け家に帰宅した。

しかし、その夜、私は悪夢を見た。夢の中で、誰かが私を睨んでいた。

「はやくこっちに来い…」

低く囁く声が響き、目を覚ますと、汗がびっしょりだった。

そして、神主に預けたはずの本が、枕元にあった。

それ以来、本を処分しようとしても、決まって戻ってくるようになった。

そしてページを開くと、新しい文字が追加されている。

——今も、少しずつ増え続けているのだ。

そして今日、新たな文章が記されていた。

「これが最後のページ

【おまけ】呪われた本は実在するのか?

1. 本に宿る“何か”

古い本には、その持ち主の想いや念が宿ると考えられている。特に、長年大切にされていた本や、特定の儀式に使われた本には、強い念が残ることがあるという。

2. 実際に報告されている怪奇現象

世界には「呪われた本」の実例が数多く存在する。特に有名なのは、イギリスのある図書館で報告された勝手にページがめくられる本の話だ。この本を読もうとすると、ページが進むたびに不気味な囁き声が聞こえたという。

3. 神社で供養される本

日本には人形供養があるように、本にも供養が必要な場合があるとされる。特に古書や骨董品に宿った念を鎮めるために、寺や神社で特別な供養が行われることがある。

あなたは、タイトルのない本を見つけたら、どうしますか?

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