これは、私が小学生の頃に実際に経験した出来事だ。
当時、家には古い日本人形があった。母が骨董市で手に入れたもので、艶のない黒髪に白い着物をまとい、どこか寂しげな顔をしていた。
正直、私はその人形が苦手だった。しかし、母は気に入っており、リビングの棚に飾っていた。
最初は特に気にしないようにしていたが、ある時から妙なことが起こり始めた。
ある夜、ふと目が覚めると、部屋の隅で何かが揺れているのが見えた。よく見ると、それは棚に置いてあったはずの人形だった。
「……え?」
寝ぼけているのかと思い何度も瞬きをした。しかし、人形は確かにそこにあった。
翌朝、恐る恐る母に尋ねた。
「ねえ、人形を動かした?」
母は怪訝そうに首を振った。「そんなことしないわよ。あれはずっと棚の上にあるはずでしょ?」
見ると、人形は元の場所に戻っていた。しかし、その日から家の中で奇妙なことが続くようになった
夜になると、誰もいないはずの廊下から足音が聞こえる。
誰も触れていないのに、棚の小物が落ちる。
たまに、微かな笑い声のようなものも耳にするようになった。
私は次第に眠れなくなり、ついに母に言った。
「お願いだから、人形を処分して・・・」
最初は取り合ってくれなかった母も、私の怯えた様子を見て、処分することを決めた。
その週末、人形を近くの神社に持っていくことにした。神主さんが人形を見るなり、険しい表情になった。
「この人形、どこで手に入れました?」
母が経緯を話すと、神主さんは静かに頷いた。
「この人形には、かつての持ち主の想いが残っています。大切にされていたものが、何らかの理由で手放され、その寂しさが形になったのでしょう。」
神主さんは人形を引き取り、お祓いをしてくれることになった。
それから家の中の異変はピタリと収まった。
しかし、それからしばらくして、私はある夢を見た。
薄暗い部屋の中、ひとりの少女が膝を抱えて座っていた。
白い着物を着た長い髪の女の子。顔ははっきり見えない。
その子は、小さな声で呟いた。
『ねぇ・・・どうして、捨てたの?』
全身に鳥肌が立った瞬間、目が覚めた。
汗びっしょりになっていたが、それ以来、人形に関する奇妙な出来事はなくなった。
あの人形は、何ものだったのか。
あの少女は、何を伝えたかったのか。今となっては知る術はない。
【おまけ】日本の伝承
日本には「人形には魂が宿る」という伝承が古くから存在する。特に、日本人形やこけしなどの人形は、長年持ち主とともに過ごすことで、持ち主の感情を吸収すると言われている。
また、昔から「使わなくなった人形は捨ててはいけない」とされ、処分する際は神社やお寺で供養する風習がある。
人形供養とは? なぜ必要なのか
人形供養とは、使わなくなった人形を供養し、感謝を込めて手放す儀式である。
全国には人形供養を行っている神社やお寺が存在し、特に東京都の「明治神宮」や京都の「宝鏡寺」は有名だ。
人形供養をする理由は、
- 持ち主の念が宿る可能性がある
- 捨てることで祟りや霊障が発生するのを防ぐ
- 人形を“物”としてではなく、大切な存在として扱う
といった背景がある。
人形にまつわる怪談・実話
日本では、多くの人形にまつわる怪談が伝えられている。特に有名なのが「お菊人形」だ。北海道のとある家庭で飼われていた人形の髪が、持ち主の死後も伸び続けるという怪異が報告されている。
このような話は世界各地にもあり、特にアンティークドールや骨董品の人形には不思議な現象が付きまとうことが多い。
人形はただのおもちゃではない
人形にまつわる怪談は昔から数多く存在し、実際に不思議な体験をした人もいる。
持ち主の想いが宿ることがある以上、むやみに捨てるのではなく、しっかりと供養することが大切だ。
あなたの家にある人形は、大丈夫だろうか?