これは、私が大学時代に経験した出来事だ。
当時、オカルト好きの友人・Kとよく心霊スポット巡りをしていた。Kは怪談や都市伝説に詳しく、その影響で私も次第にオカルトに興味を持つようになった。
ある日、Kが「降霊術を試してみないか?」と持ちかけてきた。
「大丈夫、よくある簡単なやつだから」
半信半疑だったが、Kの熱意に押されて私は参加することにした。
降霊術を行う場所は、Kのアパートだった。参加者はK、私、Kの彼女S、そして友人Mの四人。
Kが用意したのは、ロウソク数本と紙に描かれた五芒星、そして「霊を呼ぶための呪文」だった。
「本当に効果あるのか?」
Mが苦笑いをしながら言うと、Kは「遊びみたいなもんだよ」と笑った。
私たちは五芒星を囲み、Kの指示通り手をつなぎ、呪文を唱え始めた。
はじめは何も起こらなかった。
しかし、呪文を繰り返すうちに、部屋の空気が重くのしかかってきた。
耳鳴りのような音がどこからか聞こえ始める。
「……空気が変じゃない?」
Sが不安げに言った瞬間、ロウソクの炎が一斉に揺れた。
「風……?」
窓もドアも閉め切っているのに、炎は異常に大きく揺れていた。
そのとき、私の手を握るKの指が異常に冷たくなっていることに気づいた。
「おい、K……大丈夫か?」
Kは答えなかった。
ふとKの顔を見やると、Kの口元が異常なほど大きく裂けていた。
「!!」
叫びそうになった瞬間、Kが前に倒れた。
Kは苦しげに呻きながら、低い声で何かを呟いていた。
「みえる、みえる……」
その声は、Kのものではないように思えた。
「K!大丈夫か!?」
SとMがKの肩を揺さぶるが、Kは反応しない。
代わりに、ゆっくりと顔を上げたKの目は、真っ黒に染まっていた。
次の瞬間、Kが突然笑い出した。
「……あはははは……やっと……」
Kの声ではなかった。誰か、別の存在の声。
私たちは完全にパニックになり、Kを放り出して立ち上がった。
すると、部屋の四隅で何かが蠢いた。
暗がりの中、壁に人影のようなものが揺れている。
影は、次第に形を持ち始めた。長い髪、異様にねじれた手足、歪んだ笑み。
「お前らが……よんだのか……?」
Sが悲鳴を上げた。
Mが「やばい、終わらせないと!」と叫び、呪文を逆に唱え始めた。
しかし、Kの口から出たのは、それとは違う言葉だった。
「おわらないよ……まだ……」
Kが笑いながら立ち上がり、Sに向かって歩き始めた。
「帰って、帰ってください!!」
私は叫び、必死にKを引き離そうとした。
その瞬間、部屋の電気が激しく点滅し、ロウソクの炎が一気に消えた。
そして、部屋は静まり返った。
気づけば、Kは床に倒れていた。
私たちは息を整えながら、Kを揺さぶる。やがて、Kが目を覚ました。
「……おい、大丈夫か?」
Kはぼんやりとした目で天井を見つめ、ぽつりと呟いた。
「まだ、いる……」
それが何を意味するのか、私たちは知ることができなかった。
だが、それ以来、Kの様子は変わった。
夜になると部屋の中で何かをぶつぶつと呟き、時折、誰もいない空間に向かって話しかけるようになった。
私たちはそれ以来、降霊術を二度と行わなかった。
それから大学を卒業して数年後、Kとは疎遠になった。
しかし、つい最近、Kから突然連絡があった。
「……あの時のこと、覚えてるか?」
Kの声はどこか怯えていた。
「また……あいつが来た。」
その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍った。
降霊術で呼んでしまった“何か”は、あの時終わっていなかったのだ。
電話の向こうでKが息を呑む音が聞こえた。
「今、お前の後ろ……」
【おまけ】降霊術の危険性とは?
降霊術には、単なる遊びでは済まされないリスクがある。特に、
- 呼び出したものが何者なのか分からない
- 途中で儀式を中断すると、霊を帰せないことがある
- 憑依や霊障の可能性がある
といった点が問題視されている。
実際に、ウィジャボード(こっくりさん)や交霊会が原因で怪異が発生したという報告も多い。
降霊術を軽く考えるべきではない。