『校庭の少女』

こんにちは。これは僕が高校2年の夏、体験した話です。
誰にも言ってこなかったけど、最近ふと思い出して、ちゃんと文章に残しておこうと思いました。
信じるかどうかは、あなたに任せます。
でも、読んだあと、怪しい場所を見つけたときに、少しだけこの話を思い出してもらえたら。


うちの高校は、どこにでもあるような地方の県立高校でした。
校舎も普通、制服も地味、部活も平均。
でも、校庭——グラウンドの一角だけ、ちょっとだけ妙な場所があったんです。

端の方に、ボロボロのフェンスで囲われた草むらがあって、プレートに「立入禁止」って手書きで書かれてるだけの空間。
誰も近づかないし、草刈りもされないし、掃除当番にも含まれていない。
先生たちも話題にしない。だから俺たちは勝手に“墓場”って呼んで笑ってた。

あの日もそう。夏前の放課後、いつも通りに友達の山田とだらだら喋ってたとき、
「昨日の夕方、あそこで誰か立ってた」って言い出したんです。

「猫かカラスでも見間違えたんじゃね?」って笑ったら、
「制服だった。顔見えなかったけど、絶対にこっち見てた」って。

冗談にしては妙に本気の顔で。

気になった僕は、次の日の放課後、一人でグラウンドの裏に回ってみた。

草が生い茂ってて、フェンスの隅が少しだけ開いてた。
ほんの出来心でした。足を踏み入れた瞬間、空気が変わったんです。

蝉の声が遠のき、風も止んだ。
草の触れる音すら聞こえない。

するとふと、中央に何か立っていることに気づいた。

最初は遊具の残骸かと思ったけど、違った。
それは人だった。セーラー服を着た女の子。
髪が長くて、顔は下を向いていて見えないしまったく動かない。
でも、ちゃんとそこに“いる”気配がした。

「おーい」って声をかけたけど、無反応。
不気味だなと思いつつ、一歩近づいたその瞬間。

彼女が顔をゆっくり上げた。

そこには、目も、鼻も、口もなかった。
ただ、つるりとしたのっぺらぼうの顔が、僕を真っすぐに見ていた。

足が動かない。
声も出なかった。

そのまま彼女は、音もなく、ゆっくりと地面の中に沈んでいく。

——ズッ……
そんな音だけを残して。

気づいたときには、僕はフェンスの外に立っていた。
手と膝に泥がついていたけど、どうやって戻ってきたのか全く覚えていない。

その夜、僕は38度を超える熱が出て寝込んでしまった。
何度もうなされた夢の中、彼女がこちらを向いて立っていた。
口がないはずなのに、はっきりと“声”が聞こえた気がしたんです。

「かえして……」

僕は何も取っていない。ただ入っただけ。でも、それがいけなかったのかもしれません。

一週間後、ようやく学校に戻ると、山田が青い顔で言いました。

「……お前が休んでた間、あそこ、毎日誰かが立ってたんだよ」

僕はもう、何も言わなかった。

誰も近づかない。
誰も触れない。
立入禁止のプレートは、あれ以来きれいなものに変わってました。

でも、卒業前の最後の朝。
校庭を一人で眺めていたとき、フェンスの向こうの草むらに、制服の裾のようなものが一瞬だけ、風に揺れて見えたんです。

僕は目を逸らしてみないようにした。

今でもふと思い出す。
あれは一体なんだったのだろうか。

👣 あとがき:

“立入禁止”って書いてある場所には、理由があるのかもしれません。
少なくとも、僕はもう、草が深く茂った場所には近づきません。
あなたの学校にも、誰も近づかない“場所”、ありませんでしたか?

もしかしたら、みてはいけない何かが眠る場所かもしれませんよ。

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